東京電力【東証9501】の売りに、歯止めがかからない。東日本大震災前の水準から実に8割弱下落している。
1951年12月の上場来安値を59年8カ月に更新した。
終値は362円の80円安。(ストップ安)
銀行、生保など金融機関が資産株として大量保有しているため、かなりの評価損が発生していると見られる。
業績悪化の懸念が波及、連動して売られる展開となっている。
既にマネーゲーム化しているが、今後の東京電力の株価の見通しは不透明だ。
理屈上、配当利益を除けば東京電力を資産として保有している投資家はすべて損をしていることになる。(過去の株式分割は資料がないので考慮に入れていない)
売り方優勢のため、更なる空売りが入る可能性もあり、下値の目処はないが、このまま100円割れまで一直線というシナリオも考えにくいだろう。
どこかで急反騰してもおかしくないが、そのタイミングばっかりはわからない。
放漫経営をしていたJALとは異なり、法的に損害賠償義務も東電の体力の範囲で国との間で決着がつくものと考えている。
法的に東電がすべて賠償を負う責任があるかというとそれも疑問だ。
原資をして国の資本が入って経営再建というのが落としどころだと思う。まだまだ先の話だが。
原子力部門を切り離すことも考えられる。
福島原発の解体処理は何十年もかかる話で、国が管理するようなスキームになるだろう。
原資となれば株主が一定の損を被ることにはなるだろうが、極端な原資はないだろう。
民間企業として存続させるという線は基本的になくならないと思う。
会社更生法などのプランは損害賠償責任を考えた時に、賠償先に適正な賠償金が支払われないことになりかねない。
全体のスキームを考えれば、東電のバランスシートを考慮して民間企業として健全な経営が継続できる範囲の賠償額にとどめ、残りは国が補償するというのが自然な流れだ。
今は、東京電力の風当たりが強いが原子力事業は国の政策であった。また事故を起こした場合の規模は一民間企業の問題ではないことは明白であり、国として東京電力にすべての責任を押し付けるのは無理がある。
企業価値を大きく下げることになったことには変わりないが、100円以下とかそういうレベルまで売られることはないだろう。
もしそのような可能性が出てきたら、国が株式公開買い付けを行いいったん国有化するという案も考えられる。
国としてはそのような事態を想定して今から準備しておくことだ。マーケットは待ってくれない。
安定した質の高い電力を供給するということに関して言えば日本の電力会社は間違いなく世界一のクオリテイーだ。
忘れてならないのは電力事業は国家の最重要インフラであり、電力会社は民間企業とはいえ公益性の極めて高い国民的財産であることを忘れてはならない。それに電力会社が安定供給を果たしてきた貢献的な役割について正しく評価されるべきだ。
問題は原子力発電という方式を捨てるのなら、エネルギー政策を今後どうするか国民的に議論していくことが大事だ。
コスト的に原子力というものが決して安いものではないことが証明されたのだから、原子力にこだわる理由はない。
将来の化石燃料の高騰に備えるのなら、原発の運転はせず保守のみ行い、緊急時に運転を再開するというやり方もある。
石油不足になってから対応したのでは間に合わないだろうから設備だけは生かしておいて当分の間は運転休止にするといった案も考えられる。
原子力より代替のエネルギー開発に注力したり、蓄電設備や蓄電技術を生かしていくといったことの方が先決のように思う。
過去の原子力行政の歴史を紐解けば、東電以外にも国や行政、さらには政治の責任があることは間違いない。
東電の経営体質についてはいろいろ問題が指摘されてきたが、いずれは東電の経営責任を明らかにするだけでなく、国や行政、政治家の責任も正すという前提で、国民的な合意の下に前向きな議論が大事だと思う。

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