福島の事故をきっかけに高速増殖炉の危険性を考えるきっかけになる。
高速増殖炉はウラン238という核燃料としてはそのまま使えない物をプルトニウムに変えて、そのプルトニウムの核分裂でエネルギーを取り出します。
そのためにはウラン238に高速で中性子をぶつける必用があります。
中性子を減速させてはいけないので、冷却剤に水を使いません。
冷却材として液化ナトリウム(高温で100度前後)を使いますが、空気に触れると燃えてしまうし、水と触れると爆発してしまう非常に厄介な物を原子炉の冷却剤として使わなければいけないので、そこに危険があります。
メンテナンスにおいても難しい問題がいろいろとあります。
メンテナンスにおいても難しい問題がいろいろとあります。
福島原発を例に取ると、冷却機能が失われて原子炉が高温になりました。水位が下がって燃料棒が露出して、その過程でジルコニウムが水と反応して水素が発生して爆発を起こしました。
建屋や原子炉の一部に損傷があり、放射能も漏れましたが、水をぶっかけるというかなり原始的な方法でなんとか最悪の事態は回避できています。
高速増殖炉だとそうはいきません。冷却材である液化ナトリウムが漏れて、水や空気に触れた段階で火災や爆発を起こします。液化ナトリウムは高濃度のプルトニウムやコバルト60などの放射能性物質で汚染されているでしょうから、対処といってもなす術が何もありません。
水であれば福島原発のようにポンプで別の場所に移したり海に流したりもできますが、そのようなことはできません。
液化ナトリウムが原子炉に残っている限り放水もできないのです。
その結果どうなるかというと、通常のウラン235を燃やす軽水炉や沸騰水型原子炉と違い、ウラン238に中性子をぶつけて核分裂を起こす高速増殖炉の場合は、制御棒の上げ下げのみで核反応をコントロールしているため、いったん暴走すると止めることは難しくなります。
仮に防護服を着て何かができるような状態を想定しても、大量の高速中性子線がそれを不可能にするかもしれません。防護服はおそらく役に立たないでしょう。それ以前に、いざ事故が起これば何か復旧をするための時間的猶予がほとんどないと考えています。事故が起これば福島原発と比較して事故を制圧できる可能性はかなり低いのではないでしょうか。欧米が高速増殖炉を断念した理由のひとつはそこにもあるように思えます。
地震、火災、部品劣化、原因不明の炉心温度の上昇など何らかの理由で液化ナトリウムが漏れて冷却材が十分機能しなくなった段階でかなり危険な状態になります。
炉心はどんどん高温になり核反応が促進され、おそらく何か対策を考えている暇などないでしょう。あっという間に炉心溶融(メルトダウン)します。
炉心溶融が起きても絶対に外に漏れないような頑丈な格納容器があれば最悪の事態は回避できますが、今回の事故をみてもわかるように、完全に密閉されているわけではなく炉心部分と外は配管で繋がっています。
配管周りの一部が損傷しただけで燃料そのものが外に出てくることになります。
ものすごく丈夫な密閉された釜に閉じ込めることができればまだいいのですが、そのような丈夫な釜を建造することは難しいでしょうし、建造できたとしても配管周りの弱いところは火災や爆発、熱などに弱く、事故の際に密閉することは不可能です。
水蒸気爆発はなくても、液化ナトリウムというもっと危険な冷却材を使うわけですから、爆発や火災のリスクは通常の原子炉とはわけが違います。
事故の際に人が対処できるような代物ではないということです。
他に構造上のもろさとして指摘される点として、高速増殖炉の運転時には500度前後の冷却材の液化ナトリウムが高温になります。水蒸気でタービンを回すわけですから熱交換は液化ナトリウムと相性の悪い水とやり取りすることになります。
もちろん、絶対に液化ナトリウムと水が接触しないような設計にはなっていますが、地震や火災の際にどれだけ耐えることができるのか疑問です。
高温で運転するということは配管をはじめとして、すべての部品に無理が生じます。部品の劣化は高温ほど早いといえます。
軽水炉より高温で運転するために様々な無理をしているため、耐震性は軽水炉や沸騰水型原子炉と比較して構造上のもろさがあります。
一般的な原子炉の場合は緊急時に大量にホウ酸水を投入する備えがありますが、核暴走を起こしやすい高速増殖炉の場合はそれに該当する非常時のブレーキがありません。
(福島原発の場合電源が断たれた為にホウ酸水の投入ができなかったが)
同じ核分裂と言っても、どの物質をどのように核反応させるかで危険度が違うので、安全性を優先するならば制御しやすい核反応でエネルギーを取り出すことが原則です。
万が一の事故の際に引き起こされる結果が大きく異なります。プルトニウムの塊の核暴走を止められなくなったら最後はどうなるのでしょうか?考えたくありません。
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