再集計で浮き彫りになったのは、震災で企業の先行き見通しが急速に悪化し、景気の腰折れ懸念が増したことだ。先行きの業況判断指数(DI)は大企業、中堅企業、中小企業の全てで悪化。今後、設備投資の中止や延期が広がる可能性がある。
中でも中小企業の製造業はリーマン・ショックからの回復が遅れており、「震災が追い打ちをかけた」(市場関係者)。東北地方の中小部品メーカーが被害を受け「全国の自動車工場が生産をストップするなどの影響が出始めた」(日銀幹部)といい、今後の実体経済への広がりの大きさも懸念される。
今春にも「踊り場」を脱するとしていた政府・日銀の景気回復シナリオは「後ずれするのが確実」(農林中金総合研究所の南武志主任研究員)だ。
内閣府は2011年度の実質国内総生産(GDP)が0.2~0.5%ほど下押しされると試算。市場では「11年度の成長率は前年度比1%を切る」との見方が大勢だ。1月時点での日銀の11年度成長率見通しは同1.6%だった。加えて、計画停電などによる電力不足で「夏場から大幅な減産が必要になる」(みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト)。
部品の調達ルートや物流網の寸断、東京電力福島第1原子力発電所の事故の影響も不透明で、個人消費は「下げ幅が(阪神・淡路大震災の2倍超にあたる)3兆円超になる」(第一生命経済研究所の永浜氏)との見方も出ている。
とくに事態を深刻にしているのは、社会資本や設備などの直接的な被害額が大きいことだ。内閣府の試算では、東日本大震災の被害額は16兆~25兆円。阪神大震災の約10兆円の約2倍だ。
今年度後半から復興需要が本格化し、12年度から経済成長が回復軌道に乗るとの見方が支配的。ただ、経済活動が順調になる「完全復興」には「5~10年はかかる」(ニッセイ基礎研究所の櫨浩一経済調査部長)との見方は少なくなく、早期の本格回復に向け、政府・日銀は前例にとらわれない思い切った復興策を打ち出す必要がありそうだ。
<毎日新聞>
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